消滅時効について

SOSフクオカ・弁護士の有馬純也です。

 

「時効」というと刑事事件でも民事事件でも問題になります。

 

刑事事件では、例えば窃盗だと事件を起こしてから7年で時効となり、罰せられることはなくなります(刑事訴訟法250条2項4号)。

殺人事件は2010年の法改正で時効が無くなりました。

 

皆さんに身近なのは民事事件の時効ですね。

民事の時効には、取得時効と消滅時効があります。

 

取得時効とは、長年にわたって他人の土地を占有していたときに、その状態での権利を取得するというものです。

土地の境界争いの時によく問題になります。

 

消滅時効とは、誰かが権利を持っていたとしても、一定期間それを行使しないことによって、その権利が消滅してしまうというものです。

この消滅時効について、権利を持っている側(債権者)と義務を負っている側(債務者)の、それぞれの側面から見てみましょう(権利と義務は表裏の関係にあります)。

 

債務者の立場から

債務者の立場からすると、消滅時効にかかった義務は免れることができます。

例えば、友達から10万円を借りて1カ月後に返すと約束したときに、最後の返済から10年が経過すると消滅時効になります。

ただ、消滅時効の期間が経過すると自動的に義務(権利)が消えるわけではなく、債務者が債権者に対して「消滅時効を主張します」と伝えなければいけません。これを消滅時効の「援用」と言います。

債務者が消滅時効を援用することではじめて義務が消滅するのです(民法145条)。

なので、消滅時効になっている義務でも、援用せずに、ちゃんと義務を果たしてもいいのです。

先ほどの友達から10万円を借りた事案だと、10年過ぎたとしても、友達関係を修復したいのであれば返済した方がいいでしょうね。

 

消滅時効の期間にもいろんな種類があります。

原則は10年です。

商取引の場合は5年です。当事者の一方が商人(会社は全て商人です)だとこれになります。銀行とかサラ金からの借金は、相手が会社なので最後の返済から5年経過すると消滅時効を援用できます。

注意して欲しいのが、信用金庫とか住宅金融支援機構から個人で借り入れした場合や信用保証協会が代位弁済したときです。相手が会社の場合は消滅時効が5年だと書きましたが、これらの組織は商人ではないという判例になっています。なので、これらの組織から個人で借りているときは、消滅時効は10年になります。これらの組織から、会社や個人事業主として借りた場合には、こちら側が商人になるので消滅時効は5年です。

その他の主な消滅時効の期間を列挙します。

定期金債権(家賃等)   5年

退職金債権        5年

病院の診療費       3年

設計士や施工業者の代金  3年

不法行為の損害賠償請求権 3年

商品代金         2年

教育費          2年

給料債権         2年

飲食代金         1年

 

消滅時効についてはいつからスタートするのか(時効の起算点)という問題もあります。借金の場合には、債権者が権利行使することができるときからスタートします。たいていの場合は契約した日からですが、支払日が決まっている場合はその日からになります。

 

時効が中断する場合もあります。中断というのは最初からやり直しということです。

時効が中断するのは、裁判手続をとられた場合や、こちらから債務を承認した場合です。もうすぐ時効になるという時に、債務の存在を認めたり、支払いをしたりしたら時効が中断してしまい、そこからまた時効がスタートします。

 

時効期間が過ぎた後に、時効を知らずに支払いをした場合も時効が援用できなくなる可能性があるので注意が必要です。

もし、忘れていた借金の支払いを求められたときは、慌てて支払わずに、時効になっているかどうかを確認したほうがよいです。

よくあるのは、サラ金とかで借りていて払えなくなって5年以上経って消滅時効の期間が過ぎているのに、サラ金から5000円でも良いから、とりあえず払ってよと言われて払ってしまい、せっかくの消滅時効が主張できなくなるというパターンです。

 

今回はこのくらいで。次は債権者の立場から消滅時効を考えてみたいと思います。

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